飼料用米ガイド 〜省力栽培のポイント〜

省力栽培のポイント

主食用米にくらべ販売単価が低い飼料用米生産で農業者の所得を確保していくためには、収量を増やしていくことだけでなく、生産コストの低減や省力化を図る必要があります。主な技術上のポイントを解説します。

このページの目次

直は栽培

水稲直播栽培は、種籾を水田に直接播種する技術で、畑状態で播種し、出芽後しばらく生育させてから湛水する乾田直播と、代かき後の湛水状態で播種する湛水直播があります。春作業の省力化(育苗・移植作業不要)が図られるため、通常の移植栽培に比べて労働時間で約2割、10a当たり生産コストで約1割の削減効果があります。

取り組みの際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 湛水前には排水性が良く、湛水後には水持ちが良いことが求められるため、圃場の選定が重要。
  • 雑草の発生量が多くなりやすいことから、除草剤などによる適切な防除の徹底が必要。
  • 湛水直播栽培は、圃場が十分に均平化されていないと、低いところでは発芽不良や浮き苗、高いところでは鳥害や干害に注意が必要。
  • 出芽・苗立ちの不安定性等から、収量は移植栽培に比べて平均で1割ほど下まわる傾向。
直は栽培と移植栽培の労働時間・コスト・単収比較
直は栽培移植栽培比較
労働時間 13.8hr/10a 18.4hr/10a ▲25%
生産コスト
(費用合計)
92,618円/10a
11,387円/60kg
103,499円/10a
11,806円/60kg<
▲11%
▲4%
単収 488kg/10a 526kg/10a ▲7%

資料:農林水産省実証事業結果(H13〜15)全国延べ436地区の平均

 

高密度播種育苗

水稲の高密度播種育苗栽培技術は、播種量を育苗箱あたり250~300gとし、短期間で育苗し、移植することで使用する育苗箱枚数を削減できます。
※ 使用育苗箱枚数が減り育苗期間も短くなることで、育苗に係る資材費や労働費が抑えられ、慣行栽培に比べ17~25%の費用削減。

大面積に対応できる省力・低コスト技術ではありますが、以下の点に注意が必要です。

  • 播種量を多くするため、それに対応した播種機の調整やアタッチメントの購入が必要。
    ※培土の量は特に変える必要はない。
  • 播種量が多いと、苗が徒長したり老化しやすくなるので、温度管理、水管理などに注意が必要。
  • 高密度播種苗に対応した田植え機への切替もしくは改良が必要。
播種量を増量した様子
播種量を増量した様子

 

流し込み施肥

飼料用米生産において収量向上をねらうためには、追肥が重要です。夏場の背負式動力散布機による追肥は肉体的・精神的疲労が大きいため、水口から肥料を流し込む「流し込み施肥」が有効な技術となります。取組のポイントは以下のとおりです。

手順

  • 追肥を行う1~2日前より入水又は落水し、田面を「ヒタヒタ状態」にする。
  • 肥料を水口に設置し、入水する。
  • 肥料が完全になくなったら、水深5cm程度を目標に入水を続ける。
  • 十分な水深が確保できたら、入水を止め、自然落水する。田面の水が無くなった後は、通常の水管理を行う。

取り組む際の注意点

  • レーザーレベラーの使用や丁寧な代かきにより、圃場を均平にする。
  • 畦畔の崩れ、穴が無いか確認し、必要に応じて補修する。
  • 水の流量が十分あるか確認する(30a当たり流量が毎秒3ℓ以上あることが望ましい)。
肥料を必要量網袋にいれ、水口に設置し、入水する。
網袋が升に入らないときはコンテナなどを設置する。
あっという間に肥料は水に溶ける。(赤い色は流し込み専用肥料に含まれる塩化カリ)
あっという間に肥料は水に溶ける。(赤い色は流し込み専用肥料に含まれる塩化カリ)