令和6年産米はイネカメムシと高温の被害大
- 高温による出穂期の早まり+斑点米カメムシ類の発生が多く、発生時期も早かった
- 防除計画が柔軟に変更できないなど、適期防除ができなかった
- 移植が早い「あきたこまち」、「コシヒカリ」で着色粒による被害大
- イネカメムシによる不稔被害も発生→収量低下
- 水稲の出穂期~成熱期にあたる7月中旬~8月下旬の長期間にわたり、白未熟粒が増加しやすいレベルの高温が続いた
- 5月以降に移植した品種では、高温による品質低下が大きい
- 高温に強い品種でも、昨年よりも品質が低下傾向
イネカメムシの適切な情報・防除方法に基づく対策と高温対策として基本技術の励行が重要
イネカメムシの防除対策
発生状況のチェック
茨城県病害虫防除所では、病害虫の発生状況の情報発信を行っています。本年の発生情報とほ場の発生状況を確認して防除時期の適期防除に備えましょう。
防除時期
イネカメムシは、稲の出穂後に水田の畦畔を経由せず直接本田に飛び込んできます。防除時期の目安は以下のとおりです。
- 出穂期:成虫による不稔被害軽減
- 出穂後10~15日:幼虫による斑点米被害軽減
※周辺と出穂期が異なる品種は特に注意
その他
- 熟期が同じ品種をできるだけ集約して作付けすることで薬剤防除の効果の向上と効率化を図りましょう。
- 地区の一斉防除が適期に行えない場合は、地域の防除請負業者への委託を検討しましょう。
暑さに負けない米づくり①基本技術の励行
品種の組み合わせによる高温リスクの回避
- 早生・中生・晩生の品種を組み合わせた栽培計画の作成
- 新規需要米(飼料用米・米粉用米等)や高温耐性品種の作付け
早めの中干しで茎数を抑える
- 田植え後30~40日を目安に実施
- 「コシヒカリ」では、茎数が18本/株程度になったら開始
- 中干しは5~10日程度を目安に田面に軽くヒビが入る程度に
出穂後は間断かんがいで乳白粒の発生軽減
- 2湛1落(自然落水→田面が乾く前に入水)で根の活力維持
- 落水時期は「早生で出穂後25日~、中生で出穂後30日~」
出穂後の間断かんがい法
適期収穫で胴割米抑制。籾の色で判断
- 収穫は緑色の籾の割合が5〜10%になったら開始
- 後半の作業が遅れる場合、全体の刈取を3日程度早めに開始
- 急激な高温での乾燥を避けて胴割米抑制
足元から改善。堆肥の施用と耕深の確保
- 牛ふん堆肥の施用(10aあたり乾田1t・湿田0.5t目安)
- 15cm以上の深耕で根張りをよくして白未熟粒を抑制
※「コシヒカリ」などの倒伏しやすい品種では減肥が必要になる場合もあります。
暑さに負けない米づくり②高温耐性品種
高温耐性品種のメリット
令和5年産、6年産ともに「にじのきらめき」や「ふくまるSL」、「一番星」などの高温に強い特性を持つ品種は、「コシヒカリ」と比較して1等米比率の低下を抑えることができました。高温による品質低下が著しい地域では、高温耐性品種の導入を検討しましょう。
※「にじのきらめき」、「ふくまるSL」、「一番星」はいずれもイネ縞葉枯病抵抗性であり、イネ縞葉枯病対策にも有効です。
一番星
熟期 | 早生の早 |
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田植日 | 5月7日 |
出穂期 | 7月19日 |
成熟期 | 8月23日 |
1等米比率 | 76.4% |
ふくまるSL
熟期 | 早生の晩 |
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田植日 | 5月7日 |
出穂期 | 7月21日 |
成熟期 | 8月24日 |
1等米比率 | 74.7% |
にじのきらめき
熟期 | 中生 |
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田植日 | 5月7日 |
出穂期 | 7月29日 |
成熟期 | 9月10日 |
1等米比率 | 71.9% |
コシヒカリ
熟期 | 中生 |
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田植日 | 5月7日 |
出穂期 | 7月29日 |
成熟期 | 9月5日 |
1等米比率 | 48.3% |

- 熟期・田植日・出穂期・成熟期は、茨城県主要農作物等奨励品種特性表(令和6年度版)の水戸市のデータから作成。
- 1等米比率は、農林水産省公表「米穀の農産物検査結果」から令和6年12月31日現在のデータを用いた。
高温耐性品種の特性を発揮するためには
猛暑条件では、高温に強い「にじのきらめき」や「ふくまるSL」であっても、品質低下のリスクが高まります。高温耐性品種であっても、基本技術を励行し、品質向上に努めましょう。
高温耐性品種の1等米比率は低下傾向
7~8月の日平均気温の推移(令和6年、水戸市)
- 平均気温は水戸地方気象台のアメダスデータを用いた。
- 平年値は平成3年~令和2年の30年間の平均値を示す。
茨城県における水稲品種の1等米比率の推移(%)
- 農林水産省公表「米穀の農産物検査結果」から、令和5年産までは確定値、令和6年産は令和6年12月31日現在の速報値を用いた。
「にじのきらめき」は出穂25~15日前頃の追肥が収量・品質向上に効果的です。
令和6年度実証ほ事例紹介
「にじのきらめき」の全量基肥+穂肥体系による高品質・安定多収栽培の実証
「コシヒカリ」の全量基肥栽培と比較し、基部未熟粒等が少ないため、整粒歩合は高く、収量は600kg/10a以上が得られました。
地域 | 筑西市 |
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品種 | にじのきらめき |
移植期 | 5月21日 |
施肥N量(基肥+追肥) | 10.8+3.0kg/10a |
収量 | 618kg/10a |
検査等級 | 1等 |
地域 | 筑西市 |
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品種 | コシヒカリ |
移植期 | 5月5日 |
施肥N量(基肥+追肥) | 6.4kg/10a (追肥無) |
収量 | 411kg/10a |
検査等級 | 2等 |
- 「にじのきらめき」「コシヒカリ」ともに全量基肥肥料を施用した。
- 「にじのきらめき」「コシヒカリ」ともに倒伏は確認されなかった。
結果
- 出穂15日前頃(幼穂長で30mm)に窒素で3kg/10aの追肥を行うことで、600kg/10a以上の収量が得られた。
- 「にじのきらめき」は「コシヒカリ」よりも基部未熟粒を始めとした白未熟粒が少なくなり、整粒歩合が向上した結果、1等であった。
注意
高温・多湿によって発生が助長される紋枯病が増えています。倒伏や登熟不良に繋がる前に、箱剤の使用や早期の本田防除を心がけましょう。
茨城県では、「にじのきらめき」の栽培暦を公開中です。
ご不明な点については、最寄りの農林事務所経営・普及部門、普及センター、JAにお問い合わせ下さい。